中津川ひろさとの論文「更なる日台議員外交の促進を」

上記同様、人形町サロンに掲載した論文「日本政府による台湾への愚劣外交」です。主に私が2期目の時に創設した議員連盟「日本・台湾安保経済研究会」に関する内容が書かれています。ぜひお読み下さい。

 

 

更なる日台議員外交の促進を  2008.01.09

 

はじめに

 中国北京で田中角栄と周恩来が日中国交正常化に関する「日中共同声明」に調印してから昨年で35年を迎えた。それは同時に日台断交から35年が経過したことにもなる。

 日本の外交史の中でも日中国交正常化は、華やかに描かれているが、それは日本と台湾の国と国との関係が断絶したことと表裏の関係にある。

 では、断交後の日台関係は、どのように維持されてきたのであろうか。本稿では、政治的局面において、日台双方の実務外交関係の発展に重要な役割を果す、日台両国の政党・政治家による「議員外交」に焦点を当て、その歴史的経緯、影響力を見ていきたい。

1
,「交流協会」と「亜東関係協会」

 日台断交に伴い、日本は台湾との外交関係が切れても、経済、文化、人的往来といった交流を、従来通り続ける意向を表明し、一方、台湾も日本に対する報復措置を最小限に止め、現実的な配慮から日本との実務レベルでの交流を維持する方針を決めた。

 その窓口として双方に設置されたのが「交流協会」(日本)、「亜東関係協会」(台湾)である。

 「交流協会」は、台湾との実務レベルでの交流関係を維持するため、「台湾在留邦人及び邦人旅行者の入域、滞在、子女教育等につき、各種の便宜を図ること、並びにわが国と台湾との間の貿易及び経済、技術交流はじめその他の諸機関が支障なく維持、遂行されるような調査を行うとともに適切な措置を講ずること」(総則第3)を目的に設立された財団法人で、「亜東関係協会」は、「日華間の経済、貿易、技術及び文化交流促進」(林金莖『梅と桜:戦後の日華関係』)を目的に発足した。

 だが、これらはあくまで民間組織であり、決して政府間関係のものではない。そのため、「相互の交流協会は、一切、『政治問題』にはタッチできない建前になっているため、実際問題として、双方間に未解決の政治問題処理は『議員懇談会』によるほかない」(「アジア・レポート」1973315日号)のである。

 実際、台湾は、日本との正式な外交ルートがない状況下で、政党・政治家を主な対象として活動することによって、その成果を望み、「議員外交」が日台双方の実務外交関係の発展に効果を発揮した。その核となるのが議員連盟である。

2
,日華懇の発足とその影響力

 今、与野党問わず台湾との友好親善を目的とする議員連盟は複数存在するが、その原型となったのは、19733月に自民党内で結成された「日華関係議員懇談会」(以下、日華懇)である。

 日中国交正常化とそれに伴う日台断交から3ヵ月後の19721217日、参議院議員で後に総務庁長官を務める玉置和郎氏を筆頭に親台湾派議員が訪台し、国民党幹部と日台断交に代わる親交の道を話し合った。

 この中で、台湾側が玉置氏らに対し、「なにをもって、双方の経済文化交流の保証とするのか。政治を抜きにして、真の交流は考えられない」(「アジア・レポート」341)と述べ、その結果、日台の議員外交の核となる議員連盟の結成が必要であるとの結論に達したのである。

 玉置氏はこの時、議員連盟の必要性について次のように述べている(「アジア・レポート」341)

1)これからいよいよ自由アジアの協力と団結が必要となる。それは日本の国際外交の基調に日米関係の強化をおきながら、その国際外交をうらづけるものとして、50万の軍隊をもつ台湾の地政学的立場を、自由アジアの結束のカナメとする必要がある。

2)日本の防衛戦略上、台湾のもつ価値は重大である。今の自衛隊が北方重点に戦略を組むことができる最大の理由は台湾と沖縄の米軍基地の存在に負うところが大きい。

3)国家民族の生命は道義によって立つべきであり、蒋介石総統と台湾人への信義を固く守りぬくことが、日本国民が子々孫々世界から信頼をうけるためにも絶対必要である。

4
)貿易15億ドル、経済分業による日本の経済利益8億ドルあわせて20億ドルにのぼる日本の台湾における権益からみても、日台関係のきずなはいよいよ強固でなければならないということだ。

 台湾との断交以前は、法務大臣などを歴任した長老・賀屋興宣氏らを頂点に、約80名の議員で構成された「外交問題懇談会」が活発な活動を繰り広げていた。ところが、断交と同時に自然消滅したため、親台湾派の議員の間で、再結成を望む声が高まった。

 こうして日中国交正常化の翌年の1973314日、日華懇が結成されたのである。

 日華懇は、日中国交正常化後の「日本と台湾との友好関係の維持、発展」を目的に、自民党の衆参両院議員の3分の1を超える152名が趣旨に賛成するとの署名をし、発足した。その中心メンバーは、玉置和郎、田中竜夫、石原慎太郎、藤尾正行、渡辺美智雄各氏である。そして会長には後に衆議院議長を務める灘尾弘吉氏を選出した。

 灘尾氏は晩年、「如何にして日華両民族の合作を促進するかは、私の生命の一部分であり、日華懇をもって日華両国の合作を強化する橋渡し役となし、日華の友好関係を深める目的を達成するのが最大の願いである」(「アジア・レポート」22257)と述べているが、実際、日華懇は、日台間の政治的問題の解決に大きな実績を残している。

 19744月、日中航空協定調印の際に、当時の外務大臣・大平正芳氏が「日本国と中華人民共和国との間の航空運送協定は国家間の協定で、日台間は地域的な民間の航空往来である。日本国政府としては日中両国の共同声明に基づき、同声明発出の日以降、台湾の航空機にある旗の標識をいわゆる国旗を示すものと認めていないし、『中華航空公司(台湾)』を国家を代表する航空会社としては認めていない」ことを明らかにし、それに伴い、台湾外交部長の沈昌煥氏が即、「大平氏が発表した無礼な談話のなかで、わが国の国旗を認めず、わが国の尊厳と権益を重大に損ない、日台両国民が戦後力を合わせて打ち立てた友好関係を再び傷つけた。政府は中華航空機の日台航空路線就航を即日停止することを決定した。国際慣例の相互原則により、日本航空機も同航空機も同航空路線の就航を即日停止しなければならない。日本政府が日台航空路線の現状を破棄したことによって生ずる一切の結果は、日本政府がその全責任を負うべきである」との日台航空路線停止声明を出した。

 これに対し、日華懇は度々台湾を訪問、又、日本政府に再三に渡り抗議をして、日台航空路線の再開に向け奮闘し、それが実現したのであった。

3
,日台議員外交のパイプ

 日華懇は19972 月、自民党以外にも台湾との実質関係を重視する国会議員が増えたことで超党派の「日華議員懇談会」に組織改編された。当時、野党第1党であった新進党にも「日華議員連盟」という組織があったが、日華懇会長の山中貞則氏が、当時の新進党党首で後に民主党代表となる小沢一郎氏に日華懇と「日華議員連盟」との合流を呼びかけ、それに小沢氏が同意したことで実現したのである。

 そして自民党、新進党以外の政党にも呼びかけ、発足時には300(自民党202名、新進党86名、太陽党7名、新党さきがけ5)が参加。会長は自民党の山中氏、副会長には新進党の小沢辰夫氏、自民党の村上正邦、平沼赳夫、前田勲夫各氏が就き、山中氏は「党は違っても台湾に行くときは合同するなど、隔たりなくこのメンバーで活動していきたい」(「産経新聞」、199726)と結束を呼びかけた。山中氏の死後は、平沼赳夫氏が会長を引き継いでいる。

 さらに、20003月、台湾において国民党に代わり民進党が政権に就いて以降、日本側も変化を迫られ、台湾との交流促進のための新たな議員組織が与野党問わず結成されて、日台間の議員外交のパイプが増えた。

 例えば、自民党の「日台友好議員懇談会」あるいは「日台経済文化交流を促進する若手議員の会」、そして民主党では陳水扁政権誕生時に「台湾の政権交代をきっかけに、自民党に代わり、民進党とのパイプを築きたい」(「読売新聞」、2001830)として「日台友好議員懇談会」が結成された。

 そして、前回の寄稿(平成181221日掲載)でも紹介したが、「日本・台湾安保経済研究会」は、20045月に、民主党の若手47名によって発足した。

 これは「台湾の国際社会への復帰を長期的かつ全面的に支持し、日台の議員交流を通じ、東アジアの平和と安全の実現を目指す」ことを目的としており、会長に筆者、幹事長に長島昭久氏、事務局長に大江康弘氏が就任した(当時)。筆者は現在、顧問を務めている。

 特に大江氏はかつて日華懇の会長代行を務め、日台交流に多大な功績を残した玉置和郎氏の秘書を務めたこともある台湾通だ。今の政治家には珍しい信念を貫き通す気骨のある人物で、筆者は心からの信頼を寄せている。

おわりに

 以前にも記したが、「日本・台湾安保経済研究会」が20041124日に決議した
1)台湾の憲法、国名については台湾の民意を尊重し支持する
2)台湾のWHOへの加盟を支持する
3)李登輝前台湾総統の訪日を実現する
4)台湾観光客のノービザ入国を実現する
5)在留台湾人国籍の「台湾」への表記変更を実現するのうち、
1)から4)までが実現に至った。

 これらは、私たち「日本・台湾安保経済研究会」のメンバーらが、政府に強く働きかけた結果であると自負している。議員連盟は決してオフィシャルな組織ではない。だが、台湾と日本政府の橋渡し役としての機能を果たし、日台間の交流促進に大きな影響力を発揮するのである。